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ラミー サファリ L16, L18


LAMY Safari L16レッド&コンバーターセット
LAMY/ラミー インクコンバーター(サファリアルスター用)5本セット LZ24
 威厳を要求されがちな商品・万年筆にあって、本品は因襲的権威を纏わず、同社製品で最も売れているという学生向け万年筆。嵌合式、両用式、カートリッジ1本つき、軸色6色+透明、ドイツ製。1980年発売。現在金属部は黒染めから銀色へ変わった。本品についてはlamylaboが詳しい。
これが恐竜的に進化するとロットリングコアになる。

 重心位置は軸長比63%(鞘なし53%)。
天冠は+。ワイヤクリップは、ラミー2000で挟めずロゴ206で引っかかる厚地(デニム以上に)にも適応かつ二点狭持のため安定し、胴軸にはインク窓と大きな面取りがある。鞘を後着しない場合に、この面取りは不完全ながら転がり止めとなる。
首軸には指を添える凹みがあり好悪が別れる。私は合わない。

 ニブは堅くEFでも太いが書き味は悪くない。ほかF,Mが輸入されBもある。内部に検品時の青インクが残っているため付属インク以外を使う場合は洗わねばならない。
 インクカートリッジT10(7色)は独自規格で、日本製万年筆と違いカートリッジを胴軸に入れてから首軸にねじ込んで装填する。
別売吸入器Z24は本品とアルスター専用品。
 サファリに関し「ラミーのすべて」にたいへん興味深い記述がある。
「若者」のターゲットグループ(略)に対しては、バウハウススタイルの製品を作っていればいい、というわけにはいかないから(略)デザインの範囲をより広くすることが必要」しかし「当時私たちの専属デザイナーだったミュラー氏に学童向けの万年筆のデザインを依頼したのですが、彼にはそのようなペンがデザインできませんでした。」p52
G.A.ミュラーは同社2000やcp1などミニマルかつモダニズムに則った、今なお褪せない普遍的な品を設計した。その普遍性/不変性は人種や国籍を超越する越境性を持つ反面、個性を排する傾向が見られる。
しかしサファリが主客層とした若年層は自由と個性を求める傾向が強い。この個性なる得体の知れないものを、普遍性に価値を置く量産品に具わせることがミュラーにはできなかったのだろう。ラミーが求めた学童向け万年筆は他と違う個性と、他と共通する普遍性を両立し明示しなければならなかった。

 普遍的なモダニズムは、階級社会を旧弊にするとともに画一化を指向する新たな弊害を齎した。モダンデザインが目指したのは工業製品や建築の規格化であってヒトの画一化ではないが、規格化された環境下では画一的に生きることにもなる。
1960年代、各地域の文化と社会が育んだ形態言語──建築や日用品を、個性なきモダニズムは無言の形態へ変えてしまったと批判され、1970年代、それを超える模索が始まった。個性の逆襲、ポストモダンである。サファリはこのとき企画されている。
1980年代、好景気と相まって脱モダンが実験され、国粋主義を拒みつつ伝統を採り入れたポップな民族性が現れた。そして、狂乱の時代として記憶されている。
 そのなかにあって伝統に囚われず新奇性を示し、合理性をもって普遍性を実現しながらミニマルに偏らずに、原色をもって個性を付与した本品は成功したポストモダンデザインと言えるだろう。
とはいえ、設計者のW.ファビアンが実際ポストモダンを目指したかは不明だ。

 さてサファリは、名の通り野外向けを期して軸色を低彩度にしたが、その販売戦略は失敗した。同じ野外向けで失敗した商品としては90年代のロットリングアルトロがあり、カシオGショックの成功とは対照的。
 脱モダンを装って自然を志向したものの結局1983年に「ホワイト、そして三原色(略)を発売した途端にヒットした」。(前掲書p52)
色違いは使用価値以外の価値、所謂「差異を示す記号」であり機能主義的に見れば殆ど無意味な記号である。というような、多元化/多様性を拒み画一化するモダニズムの陥穽を避ける原色でもあった。

記事中「ラミーのすべて」から引用したのはラミー社長インタビュー。後年は「レッド、ブルー、イエローのモデルを加えたことでバウハウスのデザインコンセプトが明確となり売れるようになった」(ステーショナリーマガジン2号、p52、えい出版、2006)とも語っている。

ラミーのすべて―デザインプロダクトとしての筆記具(シリーズ知・静・遊・具)[単行本(ソフトカバー)]

【バーゲンブック】 ラミーのすべて

ステーショナリーマガジンNo.002(エイムック 1200)[大型本]
 人種を超える越境的な普遍性は、民族性から解放された自由であり、より多くの個を受け容れる器たらんと無私の性格を持ち、純化して統一へ向かう。しかし個性を求める自由は統一されず通俗的で我欲に基づく。ここで、大衆のためのモダンデザインは雑多な大衆性と乖離する、とヴェンチューリはモダニズムを批難し、多様性と対立性を内包することを提言した。
壁を無くそうとするモダンデザインに対応できない大衆が愚か、と大衆批判して猥雑さを切り捨てようとするならば、それは息が詰まるような世界になる。著者は「残余の空間は厄介者扱いされる」(p153)と嘆き「排除によって達成される安易な統合よりも、包合によって達成される複雑な統合を。」(p163)と記す。

建築の多様性と対立性(SD選書174)


  1. 2011/03/05(土) 06:30:00|
  2. 万年筆Fountain pen
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

僕も3角形の軸が苦手で

自分のはサファリボールペンですけど、
3角形でなく改造して、例によって革巻きで使えるようになりました。

その革ですけど、新素材としてエナメルの革が手に入り、
ペンに巻いてみると以外や以外、滑らずクッションもほどほどでいい感じ。
触った感じは軟質ビニールのカードケースなんですが、
ビニールだと縫ったとこから裂けそうですけど革なのでそれもなく、
ベースボールステッチにすればビニールのように硬い角も出なくなる上、
バレーシューズの編み上げよう(大袈裟)で見た目も悪くないです。
というわけでリクエストがあれば作りま~す。
  1. 2011/03/20(日) 12:20:02 |
  2. URL |
  3. みみどん #-
  4. [ 編集]

 そういえば、ジェットストリーム4&1のゴムグリップを革巻きに代えてもらおうと思っていたのに音沙汰なしですみません。
そうこうしているうちにジェットストリーム多色にピュアモルトグリップが付いてしまったりしてますね。

 そう遠くならないうちにお願いしようと思います。そのときにはよろしくお願いします。
  1. 2011/03/23(水) 23:47:23 |
  2. URL |
  3. 魚眼 #-
  4. [ 編集]

了解です♪

いつでも送って下さ~い
ゴムグリップ簡単に取れますかね?
  1. 2011/03/24(木) 05:31:42 |
  2. URL |
  3. みみどん #-
  4. [ 編集]

>いつでも送って下さ~い
>ゴムグリップ簡単に取れますかね?

ありがとうございます。
ゴムグリップは簡単に取れるかな?
今のところ剥がれる気配がないです。
  1. 2011/03/26(土) 02:26:01 |
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  3. 魚眼 #-
  4. [ 編集]

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